第61回比較統合医療学会学術大会
本大会中の写真は学会の許可を得ているもの以外は閲覧禁止とさせていただきます。
第61回比較統合医療学会学術大会を開催しました
2018/6/23〜24
テーマ:「総合力」
会 場:東京・秋葉原UDXカンファレンス(6F)
大会長:清水無空(比較統合医療学会理事)
平成30年6月23日(土)
<鍼灸セッション>①
第61 回大会 比較統合医療学会 獣医鍼灸ワークショップ
演者:澤村めぐみ(沢村獣医科病院)
獣医臨床において鍼灸治療が明らかに増加している。その必要性は近年とみに高まり、鍼灸治療の実際を知りたいとの要望が強くなってきた。本学会では1999年から獣医小動物臨床鍼灸コースを開催している。さらに成熟したものとして2018年9月より第1回獣医鍼灸認定医コース全13回が開催されることになった。これを機会に鍼灸治療への理解をさらに深めていただきたいと思う。
なぜ 今 東洋医学なのか
演者:興梠祐世(コウロギ動物病院)
現代医学は解剖学や病理学など科学的な見地から人体を捉え、エビデンスに基づいて合理的な治療を行う。一方東洋医学は気、血、津液、五臓六腑がそれぞれ連結し合う有機体として捉え、複眼的な視点でオーダーメイドの治療を行う。
鍼灸は運動器疾患の治療と思われがちだが、その適応範囲は神経系や消化器系など多岐に及ぶ。通常行われている治療に、鍼灸のような東洋医学が基本とするホリスティックな考えを取り入れればより一層質の高い医療サービスが実現するであろう。
同病異治と異病同治
演者:山内明子(成城こばやし動物病院)
同病異治とは、同じ疾患だが異なる治療を行うこと。異病同治とは、異なる疾患だが同じ治療を行うことである。東洋医学による治療は「この疾患にはこの治療法」と言うような単純なものではない。気、血、津液の巡り、五臓のバランス、環境の影響などさまざまな情報を組み合わせて身体の状態を推理する。視る、聞く、嗅ぐ、触る、といった感性が要求され、診察した人によって治療法も変わる。今回はダックスとプードルの椎間板ヘルニア、ビーグルやマルチーズの症例と治療法を紹介した。
鍼灸認定医コース受講のご案内
演者:菅野晶子(Aki Holistic Veterinary Care)
鍼灸については鍼を刺すという行為に抵抗を感じる人は多い。私の場合、自宅の18歳の老犬が亡くなる間際に発作を起こし、それが顔に刺した一本の鍼で止まったことがきっかけになった。そんなに難しいものではなく、私の妹が刺しても効果があった。都内は猫が多く症例として甲状腺の疾患、腎不全を紹介した。
鍼灸、カイロプラクティック、植物療法、栄養療法、ホメオパシーなどを探求してきた米国の獣医師アレン・ショーンは2005年に「鍼は万能薬でも全てを治すものでもない。西洋医学と併用することによって、将来は西洋医学に組み込まれていくだろう」と語った。
<鍼灸セッション>②
クリスタルカラーライト療法(Crystal Color Light Therapy : CCLT)
演者:鷲巣 誠(アニマルウェルネスセンター)
クリスタルカラーライト療法はクリスタル、カラー、周波数を統合して作られた治療機器である。カラー療法はチャクラを活性化させる。チャクラとはサンスクリット語で円という意味で、ヒンドゥー教や仏教では頭部から胸部、腹部の中枢を指す。また、音叉療法では経穴、経路、チャクラを調整し治療する。さらにクリスタルは光エネルギーを増強する働きがある。クリスタルカラーライト療法はこれらすべての長所を取り込んだハイブリッド治療法と言える。
<鍼灸セッション>③
獣医師 & 鍼灸師による“はじめての鍼の刺し方実習” & “ 鍼治療体験”
澤村めぐみ(沢村獣医科病院)
獣医師と鍼灸師による鍼灸ワークショップが行われた。鍼灸道具、刺鍼法、管鍼法(日本の刺鍼法)などを説明し、実際に鍼灸治療を体験してもらった。肺経、大腸経、胃経、脾経、心経、小腸経、胆経、肝経、督経、任経などが紹介された。
<漢方セッション>
小動物臨床のための漢方基礎知識
橋本昌大(高草山どうぶつ病院)
内服薬としての漢方は、健康維持のために長期服用する無毒な上薬、体調がすぐれない際に長期服用する中薬、病気の時に使用する有毒な下薬に分類される。また、漢方にも副作用が認められ、偽アルドステロン血症、低カリウム血症、肝機能障害、間質性肺炎、腸間膜硬化症などが知られている。インターフェロンとの併用による間質性肺炎は深刻な問題提起となった。
東洋医学では「腎」は生命力に深く関わっており、成長・発育・老化に影響を及ぼすと考えられてきた。例えば、小児の発育不良などには六味丸といった補腎薬が処方される。寿命の延長、発がん率の低下など、代謝を改善する薬物として補腎薬に期待できる効果が発見されている。
<一般講演>
1. パッションフラワー由来ハルミンの歯周組織形成促進及び歯周病モデルおける抑制効果
演者:禹済泰(中部大学)
2. 低分子化ホエイプロテインのマクロファージ活性化能
演者:宇都義浩(徳島大学大学院社会産業理工学研究部)
3. 漢方治療によるステロイド離脱症例
演者:吉村佳美(みのり動物病院)
4. 日本住血吸虫症に対する山梨県内認知度調査
演者:草柳愛子(山口醫院、NPO 法人ウェルネスを育む会、(一社)林屋生命科学研究所)
5. 新しい腸内リン結合サプリメント「リノパワー」による犬猫の慢性腎臓病の治療
演者:宮本賢治(エンジェル動物病院)
6. 各国の代理母出産にかかる費用と対応
演者:畑 伸秀(東海学院大学・健康福祉学部)
7. 生活習慣病(特に糖尿病)に対する乳酸発酵ハナビラタケ含有健康食品「糖鎖・GIRLTM」の可能性について
演者:大村泰治(乳酸発酵ハナビラタケ研究会)
平成30年6月24日(日)
<教育講演>
オゾン療法の基礎
演者:中室克彦(摂南大学 名誉教授)
1890年、ドイツにおいてオゾンは医療分野で初めて用いられている。オゾンによる殺菌洗浄が注目されたのは第一次世界大戦の時で、破傷風の予防に大いに力を発揮した。
現在、オゾン療法は全身療法と局所療法の2つに分類されている。全身療法として多く用いられるのは「MAH(大量自家血液療法)」や「直腸注入法」、局所療法としては「皮下注射」、「経皮オゾン浴」、「陰圧オゾン浴」、「関節腔内オゾン注射」などがある。MAHの適応症は動脈循環不全、感染症、老人病、慢性関節リウマチ、がんの補助医療。皮下注射の適応症は頚、肩、腕など局所のしびれ、痛み、浮遊感、またMAHとの併用で用いられる場合が多い。
オゾン化植物油は創傷や褥瘡に効果がある。また低濃度オゾン水はレジオネラ属菌、ノロウイルス、インフルエンザウイルスに対して不活化効果が認められる。
オゾン療法を学ぶ以前に、オゾンについての理化学的、生物学的性質を把握することが重要である。それを踏まえ獣医学の分野でも疾病治療に生かしてもらいたい。
オゾン療法の作用メカニズム
演者:三浦敏明(北海道大学名誉教授)
オゾン療法によって抗酸化酵素や解毒酵素が誘導される例が多数知られている。厳密にコントロールされた微量のオゾンは適度な酸化ストレスとして細胞に作用し、抗酸化酵素や解毒酵素などの防御系酵素群の遺伝子発現を促進するからである。
オゾン化血液を患者の体内に戻すと、活性化された血液細胞とそれらが産生したサイトカイン類やATP、4-HNEなどが全身を循環し、抗炎症作用、抗酸化作用の強化、血液循環の改善などに寄与すると考えられている。中でも4-HNEは炎症部位のNFκBの活性化を阻害し、抗炎症作用を発揮することが知られている。血流の改善に関しては、血管拡張作用や血液凝集阻止作用のあるNOとCO、およびヘモグロビンの酸素乖離を促す2,3-DPGが挙げられる。
ここ数年のオゾンの研究は大きく進展し、大量自家血液オゾン療法ならびにオゾンガス注腸法による細胞の抗酸化能強化の仕組みはほぼ明らかになっている。
災害におけるオゾン療法 ―過剰酸化ストレス状態への効果―
演者:上村晋一(日本医療・環境オゾン学会会長、阿蘇立野病院)
熊本地震の特徴の1つに直接死に比べて関連死が多かったことがある。車中泊も多く、肺静脈血栓塞栓症などを多く発症していた。こうした患者さんに対しては予防策として自家血液療法、注腸法による抗血栓作用がある。また、被災地でのオゾン水活用実績としては褥瘡患者の創部の洗浄滅菌、手洗い、洗顔、洗眼がある。オゾン水は殺菌や脱臭の即効性があり、環境に優しい点が役立っている。タオル、器具の殺菌脱臭にも効果があった。オゾン療法は災害後のステージ(時期)それぞれに幅広く活用することができる。
オゾン療法の臨床
演者:杉原伸夫(杉原医院)
患者が訴えた全ての症状に対しての大量自家血液オゾン療法による改善効果について、5段階で検討を行った。その結果「少し改善」以上の効果が80%以上を示した。中でも手足のしびれ、冷え、麻痺症状の改善効果が良好であった。これらの結果より、手足のしびれ、冷え、麻痺症状は、大量自家血液オゾン療法による血液循環促進作用や代謝活性化作用によって改善されることが推定された。
オゾン療法など統合医療により見えてきたM・ダックス椎間板ヘルニアの本質
演者:伊藤宏泰(かも動物病院)
方法としては酸素カプセルを1.2気圧で30〜60分、冷却装置付き半導体レーザー装置を10Wで10分、鍼灸、オゾンガスの注腸10〜20μg/mlで20ml、プレドニソロン、腸内フローラを整えるサプリメントの処方といった統合医療を行った。この方法によるM.ダックスにおける4年間の改善率は100%、統合医療が治療法になり得る可能性が示唆された。
診断・治療に関しては「M.ダックスの四肢麻痺は椎間板ヘルニアと断定しない」「X線診断で手術適応と判断しない」「適切にステロイドを使用する」「M.ダックスは過度な炎症反応を起こすので日常の生活習慣が起因している可能性が高い」などを心掛けてもらいたい。
オゾンジェルを用いた牛皮膚真菌症の治療経験
演者:岡本芳晴(鳥取大学農学部)
牛皮膚真菌症の原因菌は、白癬菌属で人獣共通感染症である。牛の感染状況としては冬に発症し、子牛に多い。今回、牛皮膚真菌症に対して、オゾンジェルをポリエチレングリコールと混合したオゾンクリームを作製し、1日1回患部に塗布し有効性の評価を行った。「黒毛和種の牛、6歳、雌」と「黒毛和種の牛、3歳、雄」の2例である。前者は20日後治癒、後者は14日後に治癒した。2例ではあるが抗生物質を一切使用せずに治すことができた。オゾンは反応後酸素に戻るため、抗菌力を持ちながらも創傷治癒を妨げる残留毒性がないのが特徴である。
<特別講演>
頭頸部癌に関する最新の話題
演者:杉本太郎(がん・感染症センター 都立駒込病院)
頭頸部がんは進行がんの状態で初診する症例が多く、治療の際は感覚機能や運動機能の保持を犠牲にした拡大切除術が行われることが多かった。近年はNBI(Narrow Band Imaging)など特殊な付加機能を持つ電子内視鏡システムの普及により早期の咽喉頭がんが発見されるようになった。結果、早期がんに対して機能温存の内視鏡下の経口的切除術が導入されつつある。
また、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が、再発・転移頭頸部がんの生存期間の延長に寄与するという報告もなされている。
<サプリメントセッション>
イムダイン講習会(比較統合医療学会のサテライト:合同開催)
1. エピジェネテックスをめぐる最近の話題
演者:笠原 靖(昭和大学医学部臨床病理)
2. 隠れ貧血と不妊の関係性について
演者:貝嶋美哉子(みなとみらい夢クリニック)
3. 動物病院でのサプリメントの活用
演者:上原愛童(あまみ動物病院)
4. 「Omega3 Glucan」の口腔外科領域における応用
演者:齋藤道雄(齋藤ファミリーデンタル)
5. 睡眠指導におけるハイドロフォルテとメモリーフォースの臨床報告例
演者:瀬戸洋恵(瀬戸鍼灸院)
6. ノビレチン高純度粉末の排尿障害に対するヒト臨床試験:
演者:禹済泰(㈱沖縄リサーチセンター)、本多伸吉(㈱イムダイン)
菅谷公男(㈱サザンナイトラボラトリー)、西島さおり(㈱サザンナイトラボラトリー)
7. 閉会挨拶
安川明夫((一社)比較統合医療学会代表理事)、本多伸吉(㈱イムダイン代表取締役社長)
閉会の挨拶をする本多伸吉代表取締役社長